幅魔王は2015年の時点では脱サラを意識していた。その意識を決定的とする事件が2つ起きたが、その2つ目について書いていこうともう。
2つの部署の意見をまとめて提出するさいのミス
2015年に隣の席に座っている後輩が話しかけてきた。
「やばい話があるんですが・・・」
この話から1か月半の間、幅魔王は地獄を経験した。会社への出勤がまるで刑務所への服役のような気分であった。
幅魔王がその1年半くらい前にした仕事のミスが発覚したのであった。
幅魔王の部署は他部署やグループ会社の意見を取りまとめて外注先に発注するという仕事をやっていた。他部署やグループ会社に問い合わせをする必要があったのであるが、通常は問い合わせ先は1つであった。しかし、中には問い合わせ先が2つある案件というものまれにあった。
このミスは2つの問い合わせ先に問い合わせる案件で発生した。
具体的には1つ目の問い合わせ先Aに問い合わせをして、このように修正するようにと修正の指示を受けた。そして、その後2つ目の問い合わせ先Bに問い合わせをした。このタイミングで外注先に修正の指示をしておけばよかった。
しかし、外注に指示を出す前にBに問い合わせをして、2つの修正をまとめてから外注に指示を出そうとした。Bから回答があったのは問い合わせをしてから1か月後である。そして、Bは修正なしという回答をしてきた。その「修正なし」という文字を見て幅魔王はAからの修正を忘れて外注に「修正なし」ということで発注をかけてしまったのである。
その案件を引き継いだ後輩が問い合わせ先Aからの連絡を受けて1年半後にミスが発覚したのである。
刑務所に服役しているかのような1か月半
修正内容が大したことがなければ、このミスは闇に葬られて終わったかもしれない。問い合わせ先Aもミスに気付かず終わったであろう。しかし、かなり重大な修正内容であったため、上司が謝罪に行く事態となってしまった。
上司もこのミスに対して自分をとがめることはしなかった。
しかし、
・他部署に対する謝罪が不十分
・ミスに対する説明書類の内容が理解しづらい
・社内に出す報告書の内容がなっていない
などの内容で何度も叱責を受けた。
普段は残業をあまりしない幅魔王も他部署に対する説明書類を作るため、何日か連続で終電近くまで残業した記憶がある。
周りが自分をどう見ていたのかは知らないが、このころ自分は完全に犯罪者扱いされているような気分であった。そして、最後の報告書を提出するまでの1か月半もの間、刑務所に服役している気分であった。
背景はシステム化による派遣切り
こんな状況になってしまったら誰でも会社を辞めたいと思うであろう。幅魔王もこの事件が脱サラの直接の原因ではなかったが、この事件で脱サラへの決意がなおさら固まったことは間違いない。
そして、このミスと時期を同じくしてさらにもう1つミスを犯してしまうようなことがあれば、退職とはいかなくても休職くらいは申し出ようと思っていた。そこまで精神的に追い込まれていた。
幅魔王がここまで精神的に追い込まれたミスの背景には何があったのだろうか?
システム化による派遣切りである。
システム化によって確かに業務が効率化した面がある。そのため、人員削減の一環として派遣が次から次へと切られてしまった。しかし、それだけならばこのミスは起きていないはずである。
ミスが起きた原因は今まで派遣がやっていた仕事がいつの間にか知らない間にこちらがやる仕事になっていたということである。2つの問い合わせ先に問い合わせをするという手続きもこれまで派遣がやっていた仕事であった。そして、派遣にはミスが起きないようなノウハウがあった。このようなノウハウが伝授されないあいだにこちらに仕事が回ってきたのが今回のミスの原因である。
人員削減で人を削って残った人の仕事量が増える。これはブラック企業の典型である。幅魔王もこの事件がきっかけで職場のブラック化を強く感じるようになった。
こんな状況ではいつ同じようなミスをしてもおかしくない。このような職場で長く働けるだろうか?働いたとしても毎日ミスにおびえながら仕事をしていては精神的な消耗は半端ない。幅魔王の脱サラへの決意はさらに強固なものへとなっていく。